東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)61号 判決
一、原告主張の請求の原因第一項から第三項までの事実は、当事者間に争いがない。
二、そこで、審決取消事由の有無について判断する。
原告は本件特許発明のガラスと引用例に記載されたガラス特に実施例(d)のガラス(以下「引用例のガラス」という。)とはその性質が同一であると主張し、引用例のガラスが本件特許発明の構成要件(ハ)を具有することは、被告の認めるところである。また同構成要件(ロ)を具有することは、成立に争いのない甲第八号証および同第九号証によつてこれを認めることができる。
そこで、引用例のガラスが本件特許発明の構成要件(イ)を具有するかどうか検討すると、成立に争いのない甲第一〇号証によれば、引用例のガラスの封着試験において失透化された状態において融着する旨の実験結果が報告されているが、この実験において失透化された状態において融着しうるかどうかを確めるための流動試験と封着試験が行われ、その結果を示す表には、「引用例と極めて近い化学組成のガラス」については流動試験の結果が記載されているのに、引用例のガラスについては空欄となつており、しかもそのことについて格別の理由の説明がないことが認められる。したがつて、この実験によつては引用例のガラスが流動する事実を認めることができず、ひいては引用例のガラスについて封着試験において融着する旨の上記実験結果は、にわかに信用し難いものといわなければならない。けだし、封着用ガラスにとつて、封着(融着)のための前提条件としては流動性が重要であり、とりわけ失透化された状態における封着の場合にそうであつて、このことは成立に争いのない甲第二号証に本件特許発明にかかる熱失透性ガラスに関し「軟化したガラスが流れて……機械的弱点源等のない充分に形成された封着」をうる旨の記載があることから明らかである。のみならず、かえつて成立に争いのない乙第一号証および同第二号証によれば、各実験の結果、引用例のガラスは失透前に流動せず、また、失透化された状態において融着しない事実を認めることができる。してみれば、引用例のガラスは本件特許発明の構成要件(イ)を具有しないものといつてよい。
原告は両者のガラスの組成が同一であるから同一の性質を有する旨主張する。しかし、以上のとおり、引用例のガラスが本件特許発明の構成要件(イ)を具備しない以上、それは本件特許発明のガラスと同一の性質を有するものではないことが明らかである。したがつて両者のガラスの組成が同一であるかどうかについて判断を加えるまでもなく、原告の主張は失当である。
三、よつて、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとする。